人材育成プログラム_『日日耕日塾』Day1

・日時 :2023年9月30日(土)~10月1日(日)

・場所 :長野県長野市 シソーラス株式会社DXセンター

気づけば人と人を繋いでしまう人が、地域で活きる力を身につけるプログラム。

『日日耕日塾』

告知期間が短かったにも関わらず、このコンセプトに共感してくれた方、人を介して情報を入手してくれた方、遠方でもエントリーをしてくれた方。きっかけは様々ですが計10名の参加者が集まりました。

そして、3ヶ月間のプログラムのDay1が、この日に開催されました。

従来の消費型の「観光」とは違う、持続的な「観光地域」づくりに向けて。

そのためにはまずは「人」を生み出すことが重要なのではないか。

キーワードは“間(あわい)”。

人と人を繋ぐときも。
その地域を好きになって何度も足を運ぶときも。

きっとそこには、“間(あわい)”を担う誰かがいる。

このプログラムを通じて取り組みたいテーマは『たずねる。まなぶ。ひらく。』

Day1、Day2、Day3のワークショップの中に、答えがある訳ではない。

それぞれの感覚で捉えながら、まちやくらしの中にある、さまざまな“間”に関心を持ち、それらを問い直す。そんなプログラムです。

Day1のテーマは『たずねる。』

言葉の意味としては“ある場所にいくこと、問いかけること、探し求めること”。

私たちはどうしてもすぐに課題を定義してその課題を解決しようとしてしまいがちですが、ただそこにある“ありのまま”を感じ取る力がとても大切だと語るのは、今回プログラムのメインのファシリテーターをつとめる小田裕和。

《ファシリテーター:小田》

北海道の東川町では、過疎でも過密でもない“適疎”という考え方が生まれました。

“疎”とは“ゆとり”があること。東川町は写真が有名なまちですが、写真も狙って撮るよりもふとした瞬間に感じたまま撮った写真の方が良いことも多くあります。

考えるより手前に「感受」があります。皆さんは今、まちを「感じる」ことができているでしょうか?

そこで最初のワークは“目的を持たずに”「散歩」に出かけたいと思います。

人は無意識に目的地を設定し、移動しています。

観光地に行く。ご飯を食べに行く。誰かに会いに行く。

そういった目的を手放すことは難しいけれど、一人の時間と向き合ってみようと、フィールドワークが始まりました。

―― フィールドワーク① ――

目的を手放しながらの「散歩」から戻ってきてからは、各自が感じたことをシェアしました。

メンバー全員が口を揃えてコメントしたのは、“目的を手放す”ことの難しさ。

見た瞬間に考えてしまったり、無意識に目的を設定してしまったり。

《ファシリテーター:小田》

考えても良い。でもその考えの前に、きっと感じていることがあるはず。どう感じたか、それを表現してみましょう。

一つ紹介したいのが「日常の絶景」というテレビ番組の企画です。次は写真のワークです。綺麗なものである必要はない。自分の心が動いた瞬間をぜひ今度はカメラで写真に収めてきてください。

―― フィールドワーク② ――

各自が心を動かされて撮影した風景を実際にプリントし、何に心を動かされたのかを内省します。

どこからその心の動きがやってきたのか?

自分への問いかけにより、自分の心の動きを観察します。

内省ができたら、その感情をメンバーとシェア。

この時に、メンバー間では、「Why(なぜ)そう感じたか?」ではなく、「Where(どこから)その感情が来るのか?」という問いで、感じたことを掘り下げていきました。

《ファシリテーター:小田》

Whyは断定的な“分析”になってしまい、“感覚”に意識が向かなくなってしまいます。

Whereを聞くことで、その感覚に対する“動機”を一緒に探求することができます。

《メンバーからのコメント(抜粋)》

・感性の話ができたのが嬉しかった 言葉以外の抽象的な感覚を共有できた。

・街の散歩だけではなく、みんなの意識の中を散歩した感覚。

・誰にも否定されることなく、見方の違いを共有できた。

・・・

Day1の1日目は、自分自身で心の動きを認識すること。

誰かと一緒に語り合いながら、自分自身の心の動きを探求することにフォーカスした一日でした。

日常生活や仕事の中で、自分の心を内省する時間はきっとそれほど多くはありません。

無意識に行動し、後からその結果に自分自身で(無理やり)納得する。

振り返る時も、なぜそう感じたのか、なぜそう行動したのか、自分自身に“Why”を投げかける場面も多いのではないでしょうか。

しかし、Day1の1日目で意識したのは“Where”。

その自分の気持ちが“どこから”来たのか。それを紐解くには、自分の感情やこれまでの人生を振り返る必要があり、私自身を含めとても苦労しました。

しかしそのお陰で、育ってきた環境も現在置かれている立場も違う初対面のメンバーの心の動きも知ることができ、距離がぐっと近づいた、とても貴重な経験でした。

正解を求めるワークショップとは違う、自分自身への葛藤や、良い意味でのもやもや感。

そんな期待と不安の入り混じる1日目でした。

Day1の2日目。この日の長野市は偶然「秋祭り」の開催日。会場であるシソーラスが面する大通りは、お神輿や露店、行き来する多くの方々で大賑わいでした。

日常とは異なる「お祭り」という非日常。

その中でも当然のようにある“日常”。

メンバーはそれぞれ「問いのレンズ」をつくり、この日のフィールドワークに出かけました。

《メンバーそれぞれの「問いのレンズ」》

・このまちで営む気持ちはどこから来るか?

・まちにある語りとは?語りたくなるまちとは?

・多様性のある、あじわい深いまちとは?

・このまちの性格って何だろう?

・共調したくなる想いとは?

―― フィールドワーク③ ――

メンバーそれぞれが撮影してきたのは、まちで暮らす方々と映る一枚。

それぞれの「問いのレンズ」を通して感じたことをシェアします。

《メンバーからのコメント(抜粋)》

・レンズの種類は無数にある。社会の多義性そのものを表しているのでは?

・物理的な“場所”としてではなく、人と人が語る“場”が大事で、その結果がまちづくり。

・問いの対象は何なのか、街なのか。街とつながる、とはどういうことだろう?

・Where→自分の使命を探すために、人の使命を聞いているのではと気づいた。

・モノの見方を変えるとはどういうことなのか?もっと丁寧に観察していきたい。

・自分の中の、未知とは何か、既知とは何か。既知と未知の境目とは?

・問いを立て続けるのは難しい。どうしても自分の得意分野で物事を捉えてしまう。

このプログラムの目的の一つは、“地域の文化を耕すファシリテーターを育成していくこと”であり、“正解を出す”ことが目的ではありません。

ファシリテーターの役割は、“プロセスを豊かにする”こと。

一人一人が自分自身の「問いのレンズ」を意識し、様々な角度から“まち”を捉えてみたプログラムのDay1。

すっきり解消するのではなく、もやもやする違和感も残る。

でもそのもやもやがあるからこそ、「たずねる。」ことの大切さに気付くのかもしれません。

次回Day2のテーマは「まなぶ。」

新しい「観光」の可能性に向けて、ぜひ一緒に楽しく「まなび」にいきましょう。